【知ってお得】トヨタ ランドクルーザーのディーゼル車について 後編(最新のディーゼル技術など) | フレックス

【知ってお得】トヨタ ランドクルーザーのディーゼル車について 後編(最新のディーゼル技術など)

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ランドクルーザーのディーゼル車について-後編

ディーゼル排気ガス規制は貨物車だけの法規制ではありません

乗用車もディーゼル排気ガス規制の対象になるんです

日本を走る現代のランドクルーザーにおいて、ディーゼルエンジンを搭載するモデルは現在、150プラドの上位モデルに限られます。過去を振り返ると、ランドクルーザーとディーゼルエンジンの関係は1974年にガソリン仕様からディーゼル仕様に切り替わったランドクルーザー40の時代から続いてきました。40、60、70バン、80まではラインナップの主役はディーゼル車だったのです。しかし、後にディーゼルエンジンの存在が薄れ、V8やV6のガソリン仕様車に主役の座を譲り、いつしかラインナップから消滅しまいました。これはディーゼルエンジンの環境性能を規制する自動車NOx・PM法や東京都など自治体が始めた条例規制の影響を受けたことが直接の原因です。ここまでの解説は「ランドクルーザーのディーゼル車について・前編」で述べたとおりです。私たちはディーゼル車の排気ガス規制と聞くと、すぐに1ナンバー車や4ナンバー車といった貨物車登録のランドクルーザーを連想しがちです。しかし国が定めた自動車NOx・PM法はディーゼル貨物車だけにかかる法律ではなく、3ナンバー車や5ナンバー車のディーゼル乗用車にも関わっています。主に排気ガス中の有害成分であるPM(粒子状物質=黒鉛、スス)の排出量を基準に指定地域への流入を禁止する東京都などの条例規制も同様です。ランドクルーザーでは現行モデル以前の古いディーゼル車において、ナンバー区分に限らずどのモデルも厳しい排気ガス規制の対象車であることを理解しなければなりません。

旧型ディーゼル車は3ナンバーのランドクルーザーも規制の対象

これまでのランドクルーザーで3ナンバーディーゼル車がラインナップにあったモデルはランドクルーザープラドの70、90、120です。プラドはヘビーデューティーな70バンから派生したライトデューティーなランドクルーザーで、乗用車ナンバーで乗れることからファンが多く、1990年代からは急速に世界市場に浸透していきました。もちろん日本でも初代70プラド90プラドに変わったのを機に販売台数が急激に伸び、続く120プラドも高級化路線のおかげでさらにファンを増やしました。しかし、それら3ナンバーラインナップのディーゼル車は現在、自動車NOx・PM法の規制地域である東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、三重県、大阪府、兵庫県の指定地域では継続検査(車検)を受けらないため乗り続けられませんし、中古車として新たに登録もできなくなっています。さらには指定地域以外に登録しているランドクルーザープラドであっても、自治体の条例規制によって東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、兵庫県、大阪府の道を走ると条例違反になってしまいます。ディーゼル車ファンにとっては何とも窮屈な世の中ですが、ランドクルーザープラドは90(特に5ドアのディーゼル95プラド)や70を中心に指定地域外のファンの間では高い人気を堅持しているようです。厳しいディーゼル車規制はあくまでも人工密度の高い一部の都市部に限ったこと、とも言えるのです。

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平成17年規制適合車か否かが運命の分かれ目

4ナンバー/1ナンバーの貨物車であれ3ナンバーの乗用車であれ、ディーゼルエンジンを積んだランドクルーザーが自動車NOx・PM法や条例の規制対象になっているかどうかは「平成17年規制」に適合しているかどうかで判別できます。平成17年の前後はランドクルーザー100ランクル120プラドの時代でした。この時ランドクルーザー100のディーゼル車(1ナンバー)は平成9年規制適合から平成15年規制適合へと変わった頃ですね。ランドクルーザープラド120のディーゼル車は平成14年規制適合のまま2009年(平成21年)8月まで頑張りました。どちらも平成17年規制以前の適合車なので、それぞれ最終型であっても現在では猶予期間も切れていることになります。自動車NOx・PM方における猶予期間とは、排出ガス基準に適合しない使用過程車の使用可能最終日のことです。

※自動車排出基準に適合しない使用過程車の使用可能最終日

  • 小型貨物自動車(4ナンバー) 初度登録日から8年
  • ディーゼル乗用車(5ナンバー、3ナンバー等) 初度登録日から9年
    (初度登録日とは新車として初めて登録された日のこと)

日本の市場におけるランドクルーザーのディーゼル車は、ランドクルーザー100120プラドを最後にひとまずカタログから姿を消します。そして、それぞれの後継車であるランドクルーザー200ランクル150プラドはガソリンエンジンのみのラインナップで登場しました。しかし2015年6月にようやく、ランドクルーザー150プラドにディーゼルエンジンが復活しました。4.0リッターV6ガソリンエンジンに置き換わる形で2.8リッター直4ディーゼルターボが登場したのです。ではこの復活劇の背景には何があったのでしょうか。

進化したランドクルーザーのディーゼルエンジン

先進のディーゼル排気ガス対策を採用したプラド150

ランドクルーザー150プラドに新搭載されたディーゼルエンジン1GD-FTVは最新鋭の排気ガス浄化システムを備えています。NOxとPMの排出を抑え、燃費を改善する技術もふんだんに投入されてCO2の排出も抑制。その上で以前のランドクルーザー120プラドのディーゼルエンジンよりパワーアップを果たしました。このエンジンを積んだランドクルーザー150プラドは平成17年規制を飛び越え、平成21年規制に適合する快挙を成し遂げてのマイナーチェンジです。ハイパワースペックが魅力のV6ガソリンエンジンに代わって、ランドクルーザープラド150の新しい顔となったわけです。このディーゼルエンジンは厳しいディーゼル排気ガス規制をどのような技術でクリアできたのか。それはランドクルーザー史上初となる新技術がふんだんに採用されたことに理由があります。各新技術の特徴は次のとおりです。

150プラドに採用されたコモンレール式燃料噴射システム

・コモンレール式燃料噴射システム

従来のディーゼルエンジンにも採用されていた技術ですが、さらに進化しています。コモンレールとは燃料を高圧でシリンダー内に噴射させるためのシリンダー間燃料通路連接管とも呼べるもので、エンジンの回転に合わせて最適なタイミングで高精度に燃料を高圧噴射させることで燃焼を理想に近づけてPMの生成を抑え、熱効率を高めて燃費性能や動力特性を高めます。噴射のタイミングや噴射量は最新鋭の電子制御ソレノイドインジェクターがまかなっています。

・クールドEGR

EGRとは排気ガスの一部を吸気側に導き、燃焼ガスが高温になりすぎることを抑えてNOxの生成を抑制するシステムです。クールドEGRは燃焼ガスの温度をある程度下げることで効果を高めています。

150プラドに採用された可変ノズルターボ技術

・可変ノズルベーン採用のターボチャージャー

ターボチャージャーは排気ガスの圧力を利用して新しい空気をシリンダーに押し込む過給機です。新型プラドのターボチャージャーではエンジンの回転数や負荷に応じて排気ガスの圧力を可変ノズルベーンできめ細かくコントロールし、過給効率をエンジン回転の全域で最適化。これにより理想的な燃焼を促し、低燃費と排気ガス浄化に貢献します。

・尿素SCRシステム

メルセデスベンツなどドイツ車で実績のある排気ガス浄化のための新技術です。排気管の経路に設けたSCR触媒装置の中に尿素水溶液を噴射し、有害なNOxを尿素との化学反応で無害な窒素と水に還元するシステムです。生成を抑えきれない有害物質に対応するいわゆる排気ガス後処理装置の一種です。 ※尿素水溶液(AdBlue®)は一定の走行距離を目安に補充が必要。ディーラーにて対応。

150プラドに採用されたDPR(排出ガス浄化装置)

・DPR(排出ガス浄化装置)

DPR(ディーゼル・パティキュレート・アクティブ・リダクション)はターボチャージャーを回した後の排気が通る触媒兼PMフィルターです。内蔵された酸化触媒と、NOx触媒の機能も備えるPMフィルターによって排気ガス中のCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)などとともにPMを除去します。PMの粒子がフィルターを目詰まりさせる前にエンジン制御でフィルターの温度を高め、フィルターにキャッチされたPMを燃焼・除去することで連続使用が可能となっています。

    
ディーゼル搭載車 プラド150
(2015/6~)
プラド120/プラド90
(2000/7~2002/9)
プラド90
(1996/5~2000/7)
エンジン型式 1GD-FTV 1KD−FTV 1KZ−TE
種類 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC
総排気量 2,754cc 2,982cc 2,982cc
内径×行程 92.0mm×103.6mm 96.0mm×103.0mm 96.0mm×103.0mm
圧縮比 15.6 17.9 21.2
最高出力 177PS/3,400rpm 170PS/3,400rpm 140PS(145PS*)/3,600rpm
最大トルク 45.9kgm/1,600~2,400rpm 35.9kgm/1,800rpm~3,400rpm 34.0(35.0*)kgm/2,000rpm
燃料供給装置 コモンレール式燃料噴射システムコモンレール式燃料噴射システム 電子制御式分配型燃料噴射ポンプ

*プラド90は1999/6のマイナーチェンジの際にディーゼルエンジンの型式を変えずに出力特性が見直されています。

ディーゼルエンジンはNOxとPMを大量に排出

前項のように、ランドクルーザー150プラドは新搭載された1GD-FTVに盛り込まれた数々の新技術によって日本の厳しい排気ガス規制をクリアしました。しかし、そもそもなぜディーゼルエンジンはガソリンエンジンより排気ガスを浄化することが困難なのでしょうか? ディーゼルエンジンとガソリンエンジンでは燃料が違うことで、燃料が燃える性質、燃料を燃やす方法、そして燃料を燃やした後に生まれる有害物質が大きく異なるところにその理由があります。一般に、燃料が燃えた後に生まれる有害物質は、ガソリンも軽油も主にCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)の3種類で、軽油はこのほかにPM(粒子状物質=黒鉛・スス)が加わります。ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの性質と排気ガスについて以下に列挙してみます。

  • ガソリンエンジンの排出ガスにはCO、HCを多く含むがNOxは少なく、いずれもエンジンの電子制御技術と三元触媒(三元=CO、HC、NOx)によって浄化可能です。ディーゼルエンジンは高温下で燃料を自己着火させるための高圧縮比により、燃料の量に対する空気の割合が大きくCO、HCはともに少ないのですがNOxが多く生成されてしまいます。ディーゼルエンジンが排出する大量のNOxの浄化処理は触媒装置だけでは対応困難です。
  • ガソリンエンジンではガソリンと空気の混合ガスに点火プラグで火花を飛ばして燃焼を起こすが、ディーゼルエンジンでは混合ガスが火花で点火しないため高い圧縮比により高温となる空気に燃料をさらして自己着火させる仕組みになっています。燃焼を自由にコントロールできない自己着火に頼るためディーゼルエンジンでは不完全燃焼が起こりやすく、燃え残りの軽油の粒子が排気過程で炭化してPMとなり多く排出されてしまうのです。
  • ガソリンエンジンは電子制御により燃料と空気の理想的な混合割合で燃焼を起こすことができますが、電子制御化が遅れているディーゼルエンジンは燃料と空気を正確に計って混合させることが困難です。そのため不完全燃焼が起こりやすく、やはり燃え残りの軽油の粒子が炭化してPMが多く排出されてしまいます。
  • 排気ガスを化学反応によって浄化する触媒装置はガソリンエンジンには有効ですが、PMを排出するディーゼルエンジンではPMが触媒を詰まらせてしまうため、ガソリンエンジンと同様の触媒は使えません。

ディーゼルエンジンの弱点を克服する技術の進化とは

前項で挙げたディーゼルエンジンの問題点を克服するために、現代のディーゼルエンジンではどのように対応しているのでしょう。日本ではおよそ10年前から次のような対応策が生まれ、進化してきました。

  • EGR・・・NOxの生成を抑える技術

    ディーゼルエンジンには軽油の燃焼スピードがガソリンに比べて緩やかな上に長く燃え続ける性質があり、燃焼温度が高くなることでNOxが大量に生成されます。燃焼温度を下げるために圧縮比を下げたり、EGR(排気ガス再循環装置)によって排気ガスの一部を吸気側に導いたりして(混合気に不純物を混ぜて)燃焼温度を下げる取り組みが進められてきました。
  • コモンレール・・・PMの生成を抑える技術

    旧式のディーゼルエンジンは燃料噴射ポンプの圧力のみに頼って開閉するインジェクターで燃料をシリンダー内に噴射していましたが、これに対しガソリンエンジン同様に噴射の前から燃料にあらかじめ圧力をかけておき、電子制御でインジェクターを開閉させて燃料を噴射させるのがコモンレール式燃料噴射システムです。燃料の供給量や噴射タイミングを最適にコントロールできるので完全燃焼を起こさせやすいのが特徴です。
  • 後処理システム・・・生成されてしまった有害物質の排出を抑える技術

    CO、HCはガソリンエンジン同様の酸化触媒によって無害化が容易です。NOxは酸化触媒とは別のNOx触媒によって対応します。PMは目詰まりを起こさないDPF(ディーゼル粒子状物質フィルター)で捕まえる仕組みですね。フィルターの目詰まりを起こさせないため、付着したPMはフィルターをエンジン制御等で高温にして焼き落とすやり方が採用されています。

ランドクルーザー150プラドでは上記の新技術をさらに発展させたものに加え、後処理システムとして尿素SCRシステムなどが採用されました。それ以前のディーゼルエンジンを搭載したランドクルーザーでは、燃焼温度を下げてNOxの生成を抑えるためのEGRやインタークーラーを採用するにとどまっており、このことで日本の排気ガス規制をクリアできなくなっていたのです。

ランドクルーザーにマッチするディーゼルエンジンの性質

ディーゼルエンジンを搭載したランドクルーザーは生まれた時から排気ガス規制と戦ってきました。排気ガス対策技術は常に発展途上にありましたから、規制に合わせてなんとかエンジンを改良できても出力特性にしわ寄せがいくという不運もあったのです。たとえばランドクルーザー40では1974年にガソリンエンジンに代わって搭載された最初のディーゼルエンジンは3リッターでしたが、後に3.2リッター、3.4リッターと販売終了までの10年間で小刻みに排気量を増やしました。これは排気ガス規制対策で目減りするパワーやトルクを補う改良とも言えるものだったのです。しかし、ディーゼルエンジンは、いつの時代もガソリンエンジンに対するアドバンテージがあります。軽油はガソリンよりも燃焼が穏やかですが長い時間をかけて燃え切るためにトルクの厚みが違います。燃焼速度がゆっくりだから高速回転に不向きである反面、ピストンのストロークを長くとってクランクを力強く回せるから粘りが違います。そして技術が飛躍的に進化した現在、ランドクルーザープラドなど最新のディーゼルエンジンはパワーアップしながらもダウンサイジングが進んでいます。ダウンサイジングは燃料消費が減り、車両が軽くなり、走りが軽快になるなど素晴らしいことばかり。大きくてヘビーウエイトのランドクルーザーには流行のハイブリッドや燃料電池はマッチしません。ディーゼルエンジンの拡大採用が望まれます。

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執筆者

武内 祐徳(たけうち ひろのり)
モトクロス/エンデューロなどダート系2輪レース参戦を趣味としており、マシンを運ぶためのトランスポーターとしてハイエースを所有。学生時代に建築を学んできた知識を活かし、自らハイエースの内装カスタムなども手掛ける。ハイエースやランクルの素晴らしさを多くの人に知ってほしいと自動車ウェブメディアの編集者へ転身。得意な車種はハイエース/ランドクルーザー/ロードスター/ジムニーなど。

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