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2020.12.9

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【Vol.34】突撃嘔吐隊 in 野沢温泉

2020.12.9

連載:Renoca Adventure

OMMへ初参加! 舞台は野沢温泉

OMMへ初参加! 舞台は野沢温泉

みなさんこんにちは、ロータスです。
先日僕は、初めて田中正人の鬼軍曹っぷりを体験してきましたので、その様子を書きたいと思います。
多少「汚の域」に踏み入る話もありますので、読まれる方はご注意ください。

舞台は、僕と田中さんがコンビを組んで参加してきた、通称OMM(オリジナルマウンテンマラソン)という大会です。
OMMはもともとイギリスで行われていた山岳レースで、今回の大会は日本上陸7年目だそうです。
場所は日本屈指のスキーエリアでもある野沢温泉。ゲレンデに適した傾斜のある山が広がっています。
OMMでは2日間の食料やキャンプ装備などを全て背負って競技を行います。

大会前日の夕方、野沢温泉に到着した僕らは大会へのエントリーを済ませ、2人で装備の確認を行いました。
今回は2人とも初参加です。当日の天候も加味し、テントを持っていくか、ツェルトにするのか、寝袋はどのタイプを使うかなど、軽量化について話し合いながら装備を決めていきます。
装備を振り分けながらアドベンチャーレースのアドバイスをたくさん頂けました。フィールドや疲労度に合わせた効果的なクリームの塗布方法など、細かい事ですが他では聞けない学びです。
準備が終わると僕の荷物は田中さんのよりも多くなりました。その時は「きっと大丈夫だろう」と思っていたのですが、現実はそんなに甘くはありませんでした。

OMMへ初参加! 舞台は野沢温泉

いよいよ本番

いよいよ本番

朝6時に起床し、テーピングで足回りを補強しながら空を仰ぐと、自然と気分が盛り上がります。
今回の作戦は、地図読みの熟練者である田中さんにリードしていただき、僕はそのルートファインディングを勉強させてもらいながらサポートすることにしました。
スタート1分前になると一斉に地図が渡されました。
田中さんがすぐにルートを考え始めます。僕も横で地図を見ながらルートを考え、自分なりに思考した事を田中さんに確認します。
スタート地点ではまだ地図と睨めっこしているチームが多い中、田中さんはほとんど迷わずに山へと駆け出していきます。
いよいよ始まったぞ! と気合を入れ直して僕も田中さんの後に続きます。

1日目後半。事件発生!

前半は順調にチェックポイントを回り、山をスイスイと登ったり下ったりしました。
少し藪が濃いゾーンに突入すると、僕は大学時代の登山経験を活かして藪を漕いで進みましたが、田中さんの藪漕ぎスピードは圧倒的でどんどん離されます。
「藪にかかっても前に進むんだ! 立ち止まるな! 常に姿勢は前傾に!」とアドバイスをもらうものの、ツタなどが体やザックにまとわりついて思うように進めません。何回も転倒して無駄な体力を消費しながら顔を上げると、田中さんの後ろ姿が藪のなかにどんどん吸い込まれて小さくなっていきます。「ヤバい! 追いつかなければ!」と思って焦れば焦るほどツタに絡まります。
なんとか藪ゾーンを抜けて林道に上がってきたときには、すでに右足の太ももがけいれんしていました。
まだ距離が残っているのにもう足を攣ってしまったと内心ヒヤヒヤしながら田中さんについて行きます。
田中さんは52歳、僕は26歳。若さだけではどうにもならないのが山岳系スポーツのおもしろいところですが、悔しいです。
そんな田中さんは元気いっぱいらしく、まったく走るペースが落ちません。「まだまだ付いて行くぞ!」と自分に喝を入れて田中さんの背中を追いかけました。

1日目後半。事件発生!

その時、ふと吐き気がしてきました。すぐに「ウッ」と胃がけいれんし、さっき飲んだリンゴジュースの風味が口の中に広がります。
「田中さん、ちょっと吐きそうです」
僕は田中さんの背中に言いました。
「吐くな! 飲み込め!」
田中さんなりのアドバイスを返してくれます。
しかし、込み上げるものを飲み込もうとしても、なかなかうまくいきません。息も上がって、足も攣りそうです。
もっと練習しておけばよかった、と後悔しても手遅れです。
そして、田中さんはそんな僕の内心を読んだかのようにさらにスピードを上げます。
「待ってくれぇ、田中さぁん」と、ほぼ半泣き状態で田中さんに追いついた時、ルートは林道を外れて急登に差しかかりました。
さすがにヤバいかもなぁと思い田中さんを見ると、もう急登を登り始めています。そして僕の方を振り返り、早くこっちに来いオーラを出してきます。
僕はいつでも攣りそうな足を引きずり、吐きそうな胸を押さえながら、気合いで急登を登っていきます。心拍数は最高潮に上がり、なんとか登り切った瞬間「オェェェェァ」と全力ですべてを吐き出しました。
そんな僕を見ていた田中さんは「おっ、汚なっ!」となぜか嬉しそうな顔をしながらはしゃいでいました。
この時「鬼軍曹」という田中さんのニックネームを思い出しました。

田中正人をいつか吐かせる!

田中正人をいつか吐かせる!

吐いてしまった僕に、田中さんの優しさは欠片も与えられませんでした。
何も受け付けなくなってしまった胃ではすぐにエネルギーが枯渇してしまいますが、鬼軍曹は牽引紐で僕を引っ張って行きます。
吐いてなんだかスッキリしてきた僕は、あぁ情けないなぁ、と思いつつ、田中さんに引っ張られているこの状況がたまならくおもしろくなってきました。
年齢が僕の倍もあるパワフルな田中さんの背中を見ながら、僕もいつかこんな風になりたいとぼんやり考えました。
そんなこんなで2日間の大会が終わってみると、結果はストレートエリートコース部門で第3位に入賞していました。
普段のトレーニング不足が身に染みた僕には、とても有意義な大会でした。そして田中さん過ごした山の中での濃厚な2日間は、世界を舞台に戦うアドベンチャーレーサーの心意義、みたいなものも感じられたように思えます。
これからさらにトレーニングを積んで、いつか田中さんを吐かせられるよう頑張っていきたいと思います。

小濱 廉太郎さん

著者:小濱 廉太郎RENTARO KOHAMA

通称ロータス。令和2年度よりトレーニング生となる。 プロボクサーを目指し16歳でボクシングジムに入門。その後、早稲田大学入学しワンダーフォーゲル部に所属。 卒業後、マスコミ業界に就職するが、アドベンチャーレースに対する想いが捨てきれず、イーストウインドの門をたたく。 日々の鍛錬とアドベンチャーレースを通じて更なる自己成長に挑む。 現在、カッパクラブにてリバー技術を習得中。