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2020.8.19

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【Vol.27】セイルトレーニング

2020.8.19

連載:Renoca Adventure

セイルトレーニング

アドベンチャーレースは地球上のさまざまな自然環境が競技エリアとなるため、その環境に合った多種多様なアウトドアアクティビティが採用される。
アドベンチャーレースというと肉体的な過酷さが注目されがちだが、実際は自然の力を上手く活用できるチームが上位に入る。コースが海上なら、シーカヤックだけでなくセイリングを操作することもある。
今回は、自然の摂理を学び、自然と調和することが、レースを進めるうえでとても大切な事だと、風が教えてくれた。

ヨットを譲り受ける

ヨットを譲り受ける

「ヨット欲しい人いますか?」というアドベンチャーレース仲間からのSNSの書き込みにすぐに飛びついた僕。大阪まで2人乗りディンギーヨットを受け取りに行った。 ヨットなんか車に積めるのかな? と不安になったが、我がチームメンバーのリノカ号にとっては余裕のよっちゃん(死語!?)であった。

琵琶湖でのセイルトレーニング

受け渡す前にレクチャーをしてくれるというので、琵琶湖で2日間のセイルトレーニングをすることになった。
まずは机上講習で、ヨットの仕組みや風との関係、海上での危険と安全などについて学び、そのまま実践に移る。
セイルに風を受けて進むことから、基本的には風下に向かって進むものだが、実は風上方向にもグングン進むことができるのがヨットだ。
というより、風下に進む方がスピードは出ない。なぜかと言うと、風に押されて走るだけだと、ヨットの速度が風速と同じになった時点で無風と同じになってしまうからだ。

琵琶湖でのセイルトレーニング

では風上方向はどうか?
ここで飛行機が空を飛ぶ『揚力』を思い出してほしい。風を正面から受けたヨットの帆は、飛行機の翼と同じように揚力が発生する。これが風上に向かって進む推進力となるのだ。
逆に風下方向は注意しなければいけないことが多い。
ヨットの向きを変える時、セイルの開きが左右入れ替わるので、ブーム(帆を取り付ける横棒)の位置が右左に入れ代わることになる。風下航行時のセイルの開きの入れ替えをジャイブと言うが、勢いよく動くことがあるためブームパンチ(ブームで頭を打つこと)を喰らいやすいのだ。しかも航行が風下真っ直ぐになると、予測できない不意のジャイブ、つまりワイルドジャイブが起きやすく事故も多くなるそうだ。
今回の実地訓練は、目指す目的地や風が吹いているエリア、風向き、風の強さ、ルート取り、安全と注意事項など、常にいろいろなことを考えながらの練習となった。

Eco-Challenge・Fiji大会

昨年出場した『Eco-Challenge・Fiji』大会でも、海セクションでセイリングがあった。Camakauというフィジーの伝統的な帆掛け舟で島を巡ったが、この時は風をうまく捉えることができずに苦労をした。
「今どこで風が吹いているのか?」「これからどこで風が吹くのか?」「沿岸地形的にはどうか?」
セイルの使い方よりも、それ以前の段階でつまずいていたのだ。
この『Eco-Challenge・Fiji』大会の様子は、8月14日からAmazon PrimeVideoで全10話に渡って配信されるので、本格的なアドベンチャーレースを知るうえでもぜひ見てほしい。

田中正人さん

著者:田中 正人TANAKA MASATO

1993年第1回日本山岳耐久レースで優勝し、それがイベントプロデューサーの目に留まり、レイドゴロワーズ・ボルネオ大会に間寛平チームとして出場。日本人初完走を果たす。 以降、8年間勤めた化学会社を辞め、プロアドベンチャーレーサーに転向。数々の海外レースで実績を作り、国内第一人者となる。
現在、海外レースに出場する一方で、国内イベントの企画、運営及び講習会や、若手育成、アウトドアスポーツの普及振興にも携わる。また、自身の経験を活かし「人間が学ぶものは全て自然の中にある」をテーマに全国で講演を展開する。