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2021.3.24

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【Vol.41】天職~成るべくして成った〜

2021.3.24

連載:Renoca Adventure

アドベンチャーレーサーでなかったら?

時々、満員電車に揺られる人々や渋谷のスクランブル交差点の人ごみを目にし、「アドベンチャーレースに出会っていなかったら自分は何をしていただろう?」と考え耽ることがある。
きっと、多くの人が「違う人生を歩んでいたら…今頃何をしていただろう」と同じようなことを一度は考えたことがあるだろう。
人生の岐路は人によってその数は違う。
幼少期、両親の選択により埼玉県熊谷市から富良野市へと移住。移住していなかったら、チームの拠点となる群馬県とは近い場所に住んではいただろが、アドベンチャーレースには出会えていなかっただろう。父の影響でスポーツはサッカーをしていたかもしれない。
高校受験の時、担任から「陽希は富良野高校へ進むべきだ」と強く薦められた。それでも、「クロスカントリースキーでオリンピックに出たいという」目標を捨てきれず親元を離れて、スキーの名門旭川大学高等学校へと進学した。あの時、富良野高校に進学していたら、間違えなく明治大学への進学はなかっただろう。そして、きっと北海道を出ることもなかったかもしれない。
高校3年生の秋。スキー部顧問に呼び出され「田中、明治大学から話が来ているが行くか?」といわれた。目立った成績が残せなかったため、大学へ進学し競技を続けることは難しいのではとあきらめかけていた時だった。突然のことで、その時は内容が入ってこなかった。「他の大学からも話があるのだが、先生は明治大学がお前にはいいのではないかと思っている」との言葉で、少しずつ驚きと競技が続けられる喜びが湧いていったことを今も覚えている。予想もしなかった明治大学、当時の学力では難しかった名門校に推薦で入れるかもしれない。このことを両親に話すと本人よりも喜んでくれた。もし、顧問があの時、違う大学を進薦めていたら。卒業後、体育教員を目指して日本体育大学への編入はしていなかっただろう。
大学4年生の時、クロスカントリースキー人生に区切りをつけることを決意。その先の人生に「体育教師」を選んだ。しかし、ある大会への出場がきっかけとなりアドベンチャーレースと出会った。ここで、初めて、今の自分への道が始まった。

この道を信じ走り続ける

きっと、この先も迎えるであろう「人生の岐路」。
進んだ道、選ばなかった道、残したままの道、先送りした道。どの道の先にももう一人の自分が生きている。今とは違うかもしれない自分が。
今の人生が不安定になったり、悩み不安になったりする度に「あの時…」と振り返る。だが、きっともう一つの道を進んだ自分もこちらを見て、同じことを思っているはずだ。
だから、大丈夫。真っすぐ前を見て、胸張って今の道を歩こう。他の道を進んだ自分と同じように。

この先、どんなことが待ち構えていようとも、この道を信じ走り続ける

この先、どんなことが待ち構えていようとも、この道を信じ走り続ける

アドベンチャーレーサーならでは(癖)

仕事といえども、その種類は様々。そして、きっとその仕事ならではの「癖」も様々あるだろう。
たとえば、看護師さんは普段でも他人の腕を「この人は注射が打ちやすいな…打ちにくいな…」と見てしまうことやクライマーが街中でも人工物(ビルなど)にホールド(手がかり)があるとついつい触って「これなら登れる!」と確認してしまうように、その仕事(競技)を長くやっている人にしかわからない「癖」が必ずあると思う。
それは、極めてマイナーなアウトドアスポーツでもあるアドベンチャーレースにおいても同じことが言える。
アドベンチャーレースでは種目が多く、必要とされる技術や能力も必然と多くなる。
そのため、様々な「癖」がある。

様々な「癖」

①レースではナビゲーション(地図読み)技術が必須とされるため、普段から地図を見ると「北」がどちらか確認してしまう。それに、基本的にどんな地図でも見るのが好きだ。
特に国土地理院発行の2万5千分の1の地形図がとくにワクワクする。
②山を見るとルートファインディング(道なき場所で目視できる範囲の中から、最適なルートを見つける能力)をしてしまい「どこから登るとロスなく効率よく…」と考えてしまう。ちなみ、街中や駅などの人ごみの中をどう歩いて行けたら歩くペースを落とさずに歩けるかなどと意識してしまう。それは藪漕ぎをよくするからだろう。
③アドベンチャーレーサーとして活動する傍ら、ラフティングガイドもしているため、川を見ると「流れ(本流や側流など)」を読んでしまう。ボートも浮かべられないほどの小川でも。そして、どうボートをコントロールしたらこの川を楽しめるだろうと自然と巡らせる。根本的に川を見ると嬉しくなる。時にはどこから対岸へ渡るとリスクが低いだろうと考えることも。
④レース中の荷物を極限まで軽量化を図るため、ウエア内のタグからバックパックの余分な紐、食品包装や医薬品まで角を切り落とす。無駄がったり、角があったりすると切りたくなる。
⑤レース中は軽量で保存期間の長く、高カロリーのものを主流に用意するため、コンビニなどで真っ先に、手に取る商品のカロリーなどの成分表を見てしまう。
⑥レースで使用する道具(ウエアやシューズ)はチームでそろえるため、必ず名前を書くように義務付けている。そのため普段から購入したものにすぐに名前や血液型などを書き込む。
⑦レースでは歩きながら、食べたり飲んだり、ウエアの着脱をしたりするのが当たり前なので、普段から話が長くなってしまうが日々の行動も無駄なく効率よくと心がけている。
⑧番外編だが、グレートトラバースの旅を長く続けているため、歩く速度が以前より早くなった。また、距離を1時間=5キロと計算することが染みついている。
等々。皆さんにはどんなお仕事柄の「癖」がありますか?

田中陽希さん

著者:田中 陽希YOKI TANAKA

2007年チーム・イーストウインドのトレーニング生となり、2008年4月にトレーニング生を卒業し、正式メンバーとなる。地道なトレーニングで実力をつけ、プロアドベンチャーレーサーとなる。2014~2015年、陸上と海上の両方を人力のみで繋ぎ合わせた『日本百名山ひと筆書き』と『日本2百名山ひと筆書き』に挑戦。現在『日本3百名山ひと筆書き』に挑戦中。