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2021.7.28

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【Vol.50】優しさについて

2021.7.28

連載:Renoca Adventure

「優しさ」とは?

日常生活の中で時折耳にする「優しさ」という言葉。どんな時に聞くだろう?思い浮かぶだろう?たとえば電車の中。腰の曲がったおじいさんが立っているのを見て誰かが席を譲ったとする。その姿を目にした時、大半の人が席を譲った人に対して「優しい人だな」と思うだろう。アドベンチャーレースの場合であれば、体力を消耗したメンバーに対してロープを使って牽引したり背中を押したりする姿を見たときにチームメイトに対する「優しさ」を感じるかもしれない。
つまり他人に対して思いやりを持って接する姿に人は「優しさ」を感じる。
この相手を思いやる「優しさ」はチームスポーツにおいても重要だと僕は考えている。
なぜならメンバー同士の掛け合い・助け合いによってチームの中で相乗効果が生まれて良い結果を残せると思うからだ。
もしメンバーそれぞれが個人の事は個人で完結させていたら、チームワークは生まれないだろう。チームワークを作る意味で「優しさ」は一つの重要な要素だと考える。

「優しさ」の捉え方

「優しさ」の捉え方

ここまで「優しさ」の重要性について話したが、注意しないといけない事がある。それはは受け止める人によって「優しさ」は変わるということだ。先日のチームで行なったバイクトレーニングを例に出す。
メンバーの1人が延々と続く上り坂にバテて他のメンバーから離れ始めてしまった。それを見た1人が遅れ始めたメンバーの元へ寄って背中を押してサポートをした。結果、チームがまとまって坂道を登り切る事ができた。
単純に見ればメンバーを思いやって助け合い、チームワークを発揮したシーンに見えるかもしれないが、サポートを受けた側からは違う見方もできる。
遅れたメンバーはまだ経験が浅かったため、今回のトレーニングはその人にとって自分の現状・限界を知る絶好の機会だった。しかし良い感じに追い込めている中にメンバーから助太刀の手が入ったことで成長する機会が摘み取られてしまった。
つまり「優しさ」のつもりでとった行動が捉え方によっては「ありがた迷惑」にもなってしまうのだ。

「優しさ」の精度

受け止め方によって「優しさ」は変化する。加えて場面によっても「優しさ」は変わる。
先ほど例に出した遅れたチームメイトの背中を押すシーン。これがレース中だったとしたら少しでも順位を上げる為には必要な手助けとなり、チームメイトを思いやる「優しさ」と受け止めることができるだろう。
「優しさ」は様々な要素によって変化するものなのだ。
ではどうしたら「優しさ」が一方的な物にならないで済むのか?色んな意見があるかもしれないが、チームスポーツにおいて、お互いの「信頼関係」が優しさを生むと思っている。
一緒にトレーニングやレースを重ねる事でチームメイトがどんな時に弱いのか、どんな所が苦手なのかを知る事ができる。そうすればどんな時に手を差し伸べるべきかが見えてくる。戦略的な「優しさ」といえるかもしれないが、レースでは必要な力だと思う。
これが僕の考える一つの「優しさ」のあり方だ。

「優しさ」の精度
安田 光輝さん

著者:安田 光輝KOUKI YASUDA

通称キラリン。明治大学卒業。 在学時はワンダーフォーゲル部の主将を務め、卒業後は登山用品店に勤務する、文字通りの山男。満面の笑顔の中に熱い挑戦心をひそめ、「アドベンチャーレースを通じて、自分の身体がどこまで自然の奥深くまで到達できるのか試したい!」という思いを実践中。これまでに培った山の技術に加え、現在はカッパクラブでリバー技術を学びながら世界レースの舞台でトップになるために日々修練に励む。