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2022.3.9

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【Vol.65】飾らないで話す

2022.3.9

連載:Renoca Adventure

人に伝えるということ

僕は人と話すのが苦手だ。
だけどラフティングガイドという仕事柄、お客さんとのコミュニケーションは絶対に必要だ。
お客さんが購入したいと考えている道具や装備について相談にのったり、旅先でのエピソードを聞きたりと、そんな日常の何気ない会話から始まり、川の上での安全確認や水生植物を解説したりもする。
「情報を伝える・話す」といった、ある程度一方的に情報を伝えて質問に応じるような単純なコミュニケーションには慣れてきた。繰り返し行ってきた時間の積み重ねだろう。さらに、チームイーストウインドの活動のお陰で、大勢の人向けの講演会も免疫がついてきた。 とはいえ、僕の中で「人と話すことが苦手」という意識は拭えないのだ。

自分の考えをまとめる

僕が人と話すことが苦手な理由は、「自分の気持ちと考えをまとめるのが不得意」という意識が関係しているのだと思う。
自分の考えと想いを伝えるのに、どんな言葉が一番シンプルに伝わるか?
考えの発端から話せば理解してもらえるのか?
解ってもらうためにアレもコレも説明したらいいのか?
などなど、いろいろと考えてしまう。
そうやっているうちに、伝えたいことの核がどんどん埋もれていって、ぼんやりとなってしまう。
「何が言いたいのかわからない」と聞いている相手から言われてしまうのだ。本末転倒である。

なんでいろいろと余計なことを話の中で付け足してしまうのか?
話す相手に嫌われたくない?
口論になりたくない?
そんな気持ちがあるからだ。と、アドベンチャーレースに出場して初めて気がついた。

率直に話す

アドベンチャーレースは、睡眠時間を削りながら道なき道を4人のチームで進んで行く。
三日目ともなると心身共に疲弊して、些細なことが原因で不穏な空気になることがある。
そんな時は、回りくどい言い方ではなく、今の自分の心身の状況をシンプルに率直にチーム仲間に伝えないとレース進行のスピードが落ちてしまうのだ。

率直に話す

2019年のフィジー大会の事を思い出す。
自分が思っていることをいつまでも言わずに溜め込んでしまった。その結果、精神的にも体力的にも、チームメンバーの状態がバラバラになるという苦い経験をした。
僕は「チームメンバーと口論したくない」ということに執着し、自分の意見を言わずにコミュニケーションを放棄した。直面する問題から逃げた。その結果が最悪の事態を招いでしまったのだ。

たとえ意見や考えがぶつかる事になったとしても、思った事を相手にしっかりと伝える努力をしなければ、相手のことも理解できなくなる。
言葉を飾ることなく吐き出したほうが、問題の改善に繋がるということを学んだ。アドベンチャーレースを通して気づかされたとても大事なことだ。

それでも僕にとって、頭に浮かんだことを率直に伝える事はまだ難しい。長年こびりついた習慣はなかなか取れないのだ。
アドベンチャーレースを経験することで気づくことができた「飾らないで話す」ということを心掛けて、日常生活の中でも率直な気持ちを言い合える仲間を増やしていきたい。

安田 光輝さん

著者:安田 光輝KOUKI YASUDA

通称キラリン。明治大学卒業。在学時はワンダーフォーゲル部の主将を務め、卒業後は登山用品店に勤務する、文字通りの山男。満面の笑顔の中に熱い挑戦心をひそめ、「アドベンチャーレースを通じて、自分の身体がどこまで自然の奥深くまで到達できるのか試したい!」という思いを実践中。これまでに培った山の技術に加え、現在はカッパクラブでリバー技術を学びながら世界レースの舞台でトップになるために日々修練に励む。