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2019.12.25

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【Vol.6】源流師の超便利ロープワークを伝授、紅葉を追いかけて南アルプス国立公園へ【リノカで行こう】

2019.12.25

連載:Renoca Rent

寒くてもキャンプは楽しめるし、ロープワークが出来たら超カッコイイ

晩秋のキャンプが一番好きだという金田さん。「秋冬のキャンプって、めちゃくちゃ寒くて大変なんでしょ」なんて思っていましたが、一見ネガティブな状況でも、楽しもうとすれば楽しめるんだ! という源流師ならではの心意気に、今回もシビれました。寒くたって、紅葉のキャンプ場をひとり占めできたら最高ですよね。それに、寒い時季の温泉は格別ですもんね。
そして、今回はロープワーク術も伝授していただきましたよ! こういうの、アウトドアでさらっと出来たら超カッコイイですよね。皆さんもぜひ覚えてみてくださいね!(by リノカジャーナル編集部)

原生林の紅葉と雪化粧の南アルプス国立公園を望む

立冬過ぎの11月半ば。北海道や東北、北陸の山々に初冠雪が降りた頃、ようやく東京の街路樹にも紅葉の兆しが見え始めた。冬がすぐ傍まで近づきつつあることが朝を重ねるごとに気づかされる。 一番好きなキャンプシーズンはいつですか? と聞かれたら、即答で「晩秋」と答える。理由はたくさんあるが、晩秋のキャンプが素晴らしいトップ3を発表するとしたらこうなる。
1)吸血虫が少ない
2)人が少ない
3)紅葉がすばらしい
「晩秋の寒さ」ということをどのように捉えるかで趣向は変わると思うが、「寒さを楽しむ」という旅の心持ちがあれば、虫と人が少ない最高のロケーションで、彩り豊かな晩秋シーズンのキャンプをエンジョイすることができる。 今回は最後の紅葉を求めて、雪景色前の彩り豊かな森の衣替えを追いかけて南アルプス国立公園を目指してみた。

原生林の紅葉と雪化粧の南アルプス国立公園を望む<

標高1500mに位置する静岡県県民の森へ

標高1500mに位置する静岡県県民の森へ

さて、紅葉って今どうなってるの? と、自然相手の遊びで事前に情報を得るのは簡単ではない。各地のライブカメラで現地の情報を確かめることができるが、大抵は見当違いの場所にカメラが向いていたりする。WEBの紅葉専門サイトでも有名観光地の情報がメインで、僻地のキャンプ場に関しては電話で聞くほかないのだ。
さらに、大抵のキャンプ場はハイシーズンのみの営業だったりして、11月に入ると冬期休業になってしまうところがほとんど。こんな素晴らしい季節に、世の中のキャンパー達はどこに行ってしまったのだろうか?
そんな中、南アルプス国立公園の東の山の稜線に位置する『静岡県県民の森』という場所が、11月17日まで営業していることがわかった。「あと2日で今年の営業も終わります。フリーサイトは今回あなただけなので、気をつけていらしてください」と、なんと嬉しい貸切りのお知らせ。虫も人もいないキャンプ場をひとり占めできる幸運に歓喜しながら、南アルプスを目指してクルマを走らせた。

静岡の秘境、奥静岡(オクシズ)の井川村を眼下に

南アルプス国立公園はほぼ山岳エリアのみで構成されているので、国立公園内で遊ぶということになると、本格的な登山になる。そして南アルプスの山々は、この時期すでに雪山の姿へと変わっているので、雪山登山の趣味でもなければ、その白く輝く稜線の山並みを遠くで眺めるのがよいだろう。
今回選んだ『静岡県県民の森』は、南アルプスの水を貯える井川湖を挟んだ東側の山の稜線にある。地図で確認すると、新静岡ICを下りてからも山道が約1時間30分。山梨側からの道は台風の影響で土砂崩れを起こし、通行止めになっていた。こうなると僻地のキャンプ場というのは秘境感が増強され、ますます魅力高まる場所になる。
道は悪くなかった。快適なドライブで標高がどんどん上がり、紅葉の状態を確かめながらの運転が楽しい。紅葉が一番美しかった場所は標高1000mくらいだったろうか? 標高1500mのキャンプ場付近も素晴らしかったが、やや落葉が目立つ感じだ。ただ、落葉したおかげで視界が広がり、景色はピカイチだ。道の途中や先の山伏(地元の山)では、南アルプスの峰々もよく見える。

だれもいないキャンプ場をひとり占め

今期営業終了間際のキャンプサイトは、本当に貸切り状態だった。受付で700円(テントサイト利用料/1人)を支払い、駐車スペースからわずか30秒の区画にタープを張り、焚き火の用意をする。山の稜線ということで風が強いかなとびびっていたが、樹林帯の中だったのでとても静かだった。
簡単な設営後にまだ時間があったので、地元の人達もよく登るという『山伏(2014m)』に向かってみた。クルマで約50分、登山約20分という手軽さで、展望もよく、開けた山頂が気持ちいい。子どもと一緒に家族で散策するにもいい場所だ。
キャンプ場に戻ってからは、静かな秋の夜を満喫すべく身の回りの環境を整える。焚き火に火を入れ、タープの張り具合を確かめ、寝床を整理する。これから訪れる素敵な時間を満喫すべく、陽があるうちにできる限りの準備をしておく。

だれもいないキャンプ場をひとり占め

快適空間を設計するためのロープワーク技術

快適空間を設計するためのロープワーク技術

日を越えて過ごす野外でも、信頼できる安心感を求めたいのは当然のことだ。ただ、キャンプではすべて自分自身でやらなくてはならない。そんな時にロープワーク技術があれば、設営も早くでき、そして自由自在なアレンジで快適空間を設計することができるようになる。
今後、いくつかの回に分けてロープワークとタープの張り方を解説してみようと思う。なぜタープなのか? と思うかもしれないが、タープは陽射しや雨を避けるだけでなく、高さや形を変えることで、時には風を、時にはプライバシーを確保できる万能なアウトドアギアとなる。私は解放感を求めてテントを使わずにタープのみで寝ることが多い。虫がいないこの季節の最高の楽しみでもあるのだ。

結びの王様といわれるもやい結びを覚えよう

キャンプをしていれば、木や支柱にロープを結びつけることが頻繁に発生する。そんな時に役立つ最高の結びが『もやい結び(ボーラインやブーリンとも言う)』である。

もやい結び
もやい結び①木を支点にロープを巻き付ける

①木を支点にロープを巻き付ける

もやい結び②ロープの軸になる側に輪っかを作る

②ロープの軸になる側に輪っかを作る

もやい結び③作った輪っかをよく見て、ロープの軸が上を通っているなら上から、下を通っているなら下からロープ端を輪っかの中に通す。(今回は上を通っている)

③作った輪っかをよく見て、ロープの軸が上を通っているなら上から、下を通っているなら下からロープ端を輪っかの中に通す。(今回は上を通っている)

もやい結び④輪っかの上から通したロープの端を、軸ロープの上から巻き付けて、輪っかを通っているロープと逆方向でロープの端を通して外に出す

④輪っかの上から通したロープの端を、軸側のロープを巻き込みながら、輪っかに通して外に出す

もやい結び⑤ロープの端とロープの軸を反対方向に真っ直ぐに引っ張って完成

⑤ロープの端とロープの軸を反対方向に真っ直ぐに引っ張って完成

もやい結び

巻き結びを使いこなそう

ロープの途中や端を木や支柱に簡単に止めておきたい時に役立つロープワークが巻き結び(クローブヒッチ、インクノットとも言う)だ。慣れれば2秒でロープを固定できるので、キャンプでは大いに活躍するだろう。

巻き結び
巻き結び①ロープの端を少し長めに出して支柱に巻き付ける

①ロープの端を少し長めに出して支柱に巻き付ける

巻き結び②軸になるロープの下から上に向かって巻き付ける

②軸になるロープの下から上に向かって巻き付ける

巻き結び③軸のロープと交わった初めの接点がズレないように指で押さえながら、同じ方向にもう一度ゆるく巻き付けてできたループに通す

③軸のロープと交わった初めの接点がズレないように指で押さえながら、同じ方向にもう一度ゆるく巻き付けてできたループに通す

巻き結び④ロープの端と軸のロープを反対方向に真っ直ぐに引っ張って完成

④ロープの端と軸のロープを反対方向に真っ直ぐに引っ張って完成

巻き結び

美しさは機能に直結する

私の持論だが、美しさを伴って完成されたモノは、機能にも優れていると考えている。ロープなどの単純なモノほどその傾向は強く、ねじれやゆがみがない美しい状態が結束力にも比例している。せっかく車中泊をメインとするロードトリップなのだから、こういったアウトドア技術を手に入れて、さらに快適に、そしてもっと遠くを目指してみてほしい。自分のアイデアと技術で快適なキャンプ空間を設計できれば、旅で辿り着いた場所の天候や環境の問題でがっかりすることも少なくなるだろう。自分だけの自由なリラックス空間とは意外と素朴なものだったりするのだ。

美しさは機能に直結する

今回利用した車中泊キャンプスポット

静岡県県民の森→ウェブサイトはこちら
静岡県静岡市葵区岩崎字穴入284
期間:毎年4月第3土曜~11月第3日曜
料金:700円/1人(テントサイト)
アドバイス:標高が高いので夏も夜は肌寒い。防寒着はしっかり用意して行こう。管理がとてもよく行き届いているので、ハイシーズンは混む。必ず電話で確認をすること。敷地が広大なので散歩も楽しいが、手軽に登れる山伏への登山がおすすめ。近くに買い物できる所はないので要注意。

50㎜レンズの旅風景

口坂本温泉の内湯

口坂本温泉の内湯

井川湖の秋

井川湖の秋

山伏の木道も紅葉中

山伏の木道も紅葉中

寄せ合う井川村の灯り

寄せ合う井川村の灯り

満点の星空の下で

満点の星空の下で

朝陽に輝く八王子神社

朝陽に輝く八王子神社

金田剛仁さん

著者:金田剛仁KANEDA KOJI

源流ライター。1976年7月生まれ、かに座、O型。
2004年のゲリラキャンプで山に目覚め、冬は山スキー、春は山菜、夏はイワナ、秋はきのこを追いかけながら、いつの間にか深山幽谷を旅する源流師となる。日本山岳ガイド協会所属。アウトドア中心の制作会社ハタケスタジオ代表取締役。前人未踏の人力チャレンジをサポートする人力チャレンジ応援部代表。