線状降水帯!? 記録的短時間大雨情報!? 車オーナーができる梅雨や台風の時期に発生する大雨への対策とは?

雨の多い季節がやってきました。近年は北海道でも梅雨のような天候が続くことがあるなど、全国的に長雨が記録されるようになっています。台風も年々大型化し、集中豪雨による災害が日本各地で起こっています。今回は、雨天でも車を運転するというオーナーさんに向けて、車にできる対策を中心に、万が一の水没時の脱出方法や保険の扱いまで紹介していきます。
10秒でわかるこの記事の要約
雨天時の安全はタイヤの溝とワイパーゴム、ウォッシャー液の残量確認など、出発前の点検が事故防止に直結します。
ウェットグリップ性能「a」のタイヤと窓の撥水・曇り止め処理を併用することで、豪雨時の視界とブレーキ性能を確保できます。
線状降水帯や記録的短時間大雨では冠水・水没が最大の脅威となり、アンダーパスの回避と高台への事前避難が被害を防ぐ鍵となります。
台風や洪水による水没は一般型・エコノミー型どちらの車両保険でも補償対象ですが、地震由来の津波は対象外となる点に注意が必要です。
事前に確認すべきことは?
雨の予報が出ていても、変更やキャンセルできない予定は誰にでもあります。車で出かけるにしても、雨天は視界や路面の不良などで運転に緊張を強いられます。そんな状況でも安心してハンドルを握るために、事前にできることがいくつかあります。
タイヤの溝の残量の確認

タイヤは、1本につきハガキ1枚分しか路面に接していないと言われています。つまり、車1台につきわずかハガキ4枚分で前に進み、カーブを曲がり、止まっているわけです。雨天の走行では、タイヤの排水性能が安全を左右します。タイヤは溝によって路面の水を排水しますが、ゴムがすり減って溝の深さが十分でない状態では、排水性能が低下してしまいます。ブレーキを踏んでいるのになかなか止まらなかったり、カーブで滑ったりと、怖い思いをするだけでなく、周囲の車や歩行者にも危険を及ぼしかねません。

では、実際にどの部分を確認すればいいでしょうか?
タイヤの側面にはスリップサインと呼ばれるマークがあるので、その部分の溝を確認してみましょう。残量が1.6mm以下になると、スリップサインと呼ばれるマークが出てきます。この状態ではかなり排水能力が低下しているので、サインが出てからではなく、出る前にタイヤを交換しましょう。
ワイパーゴムの確認

雨天時の運転で怖いのは、フロントウインドウについた水滴で前が見えにくくなることです。ワイパーゴムは水滴を拭き取るために柔軟性が必要です。古くなってくると柔軟性が失われ、ガラス面にしっかりと密着することができなくなります。また、劣化して亀裂が入っていたり、ちぎれていたりすることもあるので確認しましょう。
ウインドウウォッシャー液の残量の確認

フロントウインドウは虫や土埃、油などで汚れていきます。雨が降ってきたのでワイパーを動かしたら、逆に汚れが広がってしまったという経験をした人もいるでしょう。そんなときはウインドウウォッシャー液の出番なのですが、残量がなくなっていることに気が付かず、ワイパーレバーを動かしても液が出ないということも。使用頻度が少ないと、見過ごしてしまいがちなポイントです。大抵の場合はボンネットを開ければ残量がわかるようになっているのでしっかりと確認しておきましょう。
ヘッドライトやウインカー、デイタイムライトの確認
雨天時は、運転している自分だけが見えにくいというわけではありません。対向車は水煙と一緒になってしまって判別しにくいということもあります。周囲が暗くなりかけたらヘッドライトを点灯して走るのがオススメです。被視認性という意味でもヘッドライトやデイタイムライトの役割は重要です。当然ながら、ウインカーも正確に点灯しているかどうかを確認しましょう。
フォグランプやバックフォグの確認

霧や霧雨といった状況では、フォグランプやバックフォグを併用しましょう。フォグランプはヘッドライトよりも見やすく、対向車も発見しやすいランプです。また、バックフォグは後続車に自分の車の存在を知らせる上で非常に有効な灯火です。
車用品でできる梅雨対策
鬱陶しい梅雨の季節ですが、運転をするオーナーにとっては少しでも快適に、そして安全に走りたいものです。では、車用品でできる梅雨対策はあるでしょうか?
雨天に強いタイヤを選ぶ

路面に雨水がある状態では、しっかりとタイヤが接地できません。走行時にタイヤが排水できず完全に浮いた状態になるハイドロプレーニングでは、ハンドルもブレーキも効かない状態になり非常に危険です。
そんな怖い雨天の運転でも、排水能力が高いタイヤを選べば安全性を上げることができます。現在はタイヤラベリング制度により、タイヤがもつさまざまな性能の表示が義務付けられています。
では、実際にどのようなタイヤが雨天に強いのでしょうか? 判別は簡単で、ウェットグリップ性能「a」を選ぶのがいいでしょう。(ウェットグリップは、性能のいい順にa/b/c/dの4段階で示されています。)
タイヤラベリング制度
タイヤラベリング制度は、タイヤの転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を等級制度に基づき表示するラベリング(表示方法)制度です。この制度は、社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)が自主基準として策定し、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能が互いに一定値を満たすタイヤを『低燃費タイヤ』として定義しています。転がり抵抗性能は「AAA・AA・A」、ウェットグリップ性能「a・b・c・d」の等級でそれぞれ表示されます。
窓ガラスの撥水処理

運転するときに視界がクリアでない状態では、安全に運転することができませんね。とくにフロントウインドウはハンドルを握るドライバーにとって、前方の状況を把握するためにとても重要な部分です。
市販の撥水剤を塗る
ウインドウに撥水剤を塗ることで、付着した雨水を弾くことができます。撥水剤はカー用品店やホームセンター、通販サイトなどで手に入れることができ、DIYで手軽に施工できるものが多いのが特徴です。撥水効果は製品によってさまざまですが、丁寧に施工しないと逆に視界不良の原因になってしまうものもあるので注意が必要です。
また、ワイパーを使っているとコーティング剤が剥がれて撥水効果が落ちていくので、こまめに塗ることを推奨している製品もあります。
撥水コーティングをしてもらう
撥水効果が高いとされているのは、カーコーティングなどのディテーリングを専門に行っているお店による撥水コーティングです。お店によっては、ボディの撥水コーティングだけでなく、ウインドウにも施工してくれるメニューを用意しています。使用状況にもよりますが、一般的にはDIYで行う市販の撥水剤よりも長持ちするので、コストパフォーマンスを重視しないならば、こちらも選択肢として検討してみてはどうでしょうか?
撥水加工と親水加工
撥水加工を施した面には微細な突起があり、水分を水滴のようにして弾くことができるようになります。対して親水加工を施した面はとても平滑なため、水分が留まることができず流れるようになっています。水分を寄せ付けない撥水と親和性の高い親水。作用は違いますが、どちらも水を除去する機能は優れています。
窓の内側の曇り

窓の内側が曇ってしまうと視界が遮られます。当然ワイパーでは曇りを除去できないので、停車中はまだしも運転中に発生してしまったらとても危険ですね。曇りの原因は、車内の水分です。車内と車外の温度差から車内の水分が窓の内側に結露することで生じます。運転に支障をきたす窓の曇りを解消するにはどうしたらいいでしょうか?
エアコンとデフロスターを稼働させる

まずは車内の湿度を下げることが肝心です。人間は呼吸とともに体内の水分を排出しているので、車内の水分量が増えていきます。曇りの原因である車内の水分量は、エアコンを稼働することで減らすことができます。
同時にデフロスターも稼働させましょう。これはフロントウインドウに向けてエアコンの空気を吹き出す機能で、強制的に風を当てることで、曇りを解消することができます。
曇り止め剤を塗る
窓の曇りを予防するには、曇り止めを使うのが効果的です。スプレータイプやシートタイプ、スポンジで塗り込むタイプなど、さまざまな商品が販売されています。曇り止め効果のある液体をガラス面に直接塗ることで、水分を寄せ付けずに曇りを防止します。
一度施工するとある程度の期間曇り止めの効果は持続しますが、永続的なものではないので、再施工が必要になります。また正しく施工しないと、ガラス面がギラギラとしてしまって逆に見えにくくなることもあるので注意しましょう。
除湿剤を使う
裏技的な方法ですが、除湿剤などを車内に置いておくという手もあります。除湿剤というと吸湿した水分が見える家庭用のものを思い浮かべますが、このタイプはオススメできません。水分には塩化カルシウムが含まれていることが多いので、万が一こぼれた場合、車の内装に対して悪影響を与える可能性が高いのです。
最近では、繰り返し使うことができる除湿機が発売されています。このタイプは、除湿した水分が液体として残らず吸湿剤の中に留まるので、水分が漏れ出す心配がありません。定期的に取り外して乾燥させることで、再利用が可能になります。
豪雨や水没への対策
線状降水帯や記録的短時間大雨情報など、大雨に関する新しい言葉をよく耳にするようになりました。自動車オーナーとして一番怖いのは水没です。運転時や停車時に注意すべきこと、事前に行えることなどを考えてみましょう。
アンダーパスなどに近づかない

水は低いところに流れます。普段は川底が見えるようなところでも、大雨では護岸いっぱいまで水位が上がることがあります。
そんなときに特に注意したいのはアンダーパスです。線路や道路を交差して下をくぐるように設計されているアンダーパスは、路面が低い位置にあるので、必然的に水が集まってきます。豪雨では排水が追いつかず、雨水が溜まっていることがあります。この溜まっている水というのが厄介で、濁っているため水深が分かりづらいのです。
アンダーパスの壁面に水深を示す目盛りが掲示されている場合もありますが、おそらく確認する余裕はないでしょう。普段は気にせずに通過しているところでも、大雨のときは危険な状態になる可能性が高いので、迂回するルートを選択するほうが無難です。
高台へ避難させる
駐車時の水没も避けたいものです。車を駐車した場所が低地だったり窪地だったりすると、短時間で大雨が降った場合には排水が追いつかずに水没する可能性があります。また、自宅等の駐車場が地下だったり、低い土地にある場合も同様です。大雨が降るという予報が出たら、高台や立体駐車場に車を避難させておくといいでしょう。
自分の車の渡河能力を知っておこう
自分の車の渡河能力をご存知でしょうか? 大きな水溜りは水没の危険があるため、できることならば避けることをオススメしますが、どうしても走り抜けなければいけないとなったときには、自分の車が水深何センチまで走行可能なのかが問題になります。
ちなみにランドクルーザーの200シリーズは水深70cmまで走行が可能です。いっぽうで200系ハイエースは、軽自動車が走行できた水深でも水没したという報告もあります。

ただし、ここで強調しておきたいのは「渡河能力が高い=冠水路に入っていい」ではないということです。冠水路は水深を外から判断できず、流れがあればわずか数十cmでも車体やタイヤが押し流される危険があります。マフラーから水を吸い込めばエンジンは一発で停止します。渡河性能はあくまで「やむを得ない場合の余力」と捉え、何よりも無理をしないことが肝心です。
雨雲レーダーなどのスマホアプリを活用する
天気を確かめるためにスマホの気象アプリを使っている人も多いでしょう。気象アプリには雨雲の動きをシミュレーションする機能もついているものもあります。1時間以内の雲の動きを予測する精度はかなり高いので、ルートを変更するなど対策をしておくことをオススメします。
近年、大雨や台風で実際に起きた車の被害
「自分の地域は大丈夫」と思っていても、近年の大雨は誰の生活圏でも起こりうる規模になっています。いくつか実例を見てみましょう。
記憶に新しいのが、2019年の令和元年東日本台風(台風19号)です。国土交通省などの資料によると、関東・東北を中心に全国142か所で堤防が決壊するなど、甚大な被害が広範囲に発生しました。注目すべきは、静岡大学などによる人的被害の分析で、屋外で亡くなった方のうち「車内」での犠牲者の比率が近年の災害と比べて高かったと指摘されている点です。車での避難や移動中こそ危険が高まることを示しています。鉄道でも、浸水想定区域内にあった北陸新幹線の車両基地で新幹線車両10編成が水に浸かり、のちにすべて廃車となりました。自走できる「車」であっても、水には極めて弱いことを物語る象徴的な出来事です。

近年は台風以外でも、線状降水帯による局地的豪雨が毎年のように発生しています。気象庁などの資料によれば、2024年7月下旬には山形県を中心に総降水量が400mmを超え、平年7月の月降水量を大きく上回る記録的大雨となりました。同年8月21日には東京都内で帰宅時間帯に記録的短時間大雨情報が発表され、港区付近で約100mmの猛烈な雨により浸水・冠水が発生しています。地方・都市部を問わず突然襲ってくるのが、近年の大雨の特徴です。
その背景には、雨の降り方そのものの変化があります。気象庁のデータでは、1時間に50mm以上の「非常に激しい雨」が降った回数は、直近10年(2015〜2024年)の年平均が約334回と、統計初期の10年(1976〜1985年)の約226回から大きく増えています。台風を除く豪雨災害の6割以上は線状降水帯によるものとされ、対策の重要度は年々高まっているのです。
車が冠水・水没したらどうする? 脱出と対処
万が一、走行中に冠水路でエンジンが止まり、車が水に取り囲まれてしまったら――。いざというときの行動を知っておくと、生死を分けることがあります。
まず、シートベルトを外し、ドアより先に窓が開くかを確認します。車外の水位が高いと水圧でドアが開かなくなるため、電気系統が生きているうちに窓から脱出するのが基本です。パワーウインドウは水没後も少しの間は動くことがあります。

窓もドアも開かない場合は、脱出用ハンマーで窓ガラスを割って脱出します。ハンマーがないときは、ヘッドレストを引き抜いて金具の尖った部分をガラスの隅に打ち付ける方法もあります。脱出用ハンマーは安価で場所も取らないので、グローブボックスやドアポケットに常備しておくと安心です。
そして水が引いた後、浸水した車を見つけても自分でエンジンをかけてはいけません。国土交通省は、外観上は問題がなさそうに見えても、感電や電気系統のショートによる車両火災のおそれがあるとして注意を呼びかけています。使用したい場合は、購入した販売店または最寄りの整備工場に相談してください。とくにハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は高電圧バッテリーを搭載しているため、むやみに触らないことが重要です。
水没した車に保険は使える?
水没してしまった車の修理や買い替えには高額な費用がかかります。気になるのが車両保険の扱いです。
結論から言うと、台風・洪水・高潮による車の水没は、一般タイプ・エコノミー(限定)タイプのどちらの車両保険でも補償対象となるのが一般的です。エンジンや電気系にダメージが及んで修理不能・全損となった場合は、免責金額が差し引かれず、設定した車両保険金額の全額が支払われるケースもあります。
注意点もあります。地震・噴火を原因とする津波による水没は、原則として車両保険の補償対象外です。これに備えるには「車両全損時定額払」などの特約が別途必要になります。また、エコノミー型の場合、ハンドル操作を誤って川や用水路に転落するなど「人為的ミス」と判断される水没は、補償対象外となることがあります。
等級への影響も知っておきましょう。一般的な衝突事故で車両保険を使うと「3等級ダウン」となりますが、台風・洪水などの水災による水没は「1等級ダウン」と、影響が軽く扱われます。
ただし、補償の範囲や判断基準は保険会社や契約内容によって異なります。詳しくは加入している保険会社にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
- 大雨の日に運転する前、最低限どこを点検すべき?
- タイヤの溝(スリップサインが出る前、つまり残量1.6mm以下になる前に交換)、ワイパーゴムの劣化、ウインドウウォッシャー液の残量の3点が基本です。
- 冠水した道路は何cmまでなら走れる?
- 水深は濁りで判断できず、悪路走破性の高いランクル200系でも70cmが限界の目安です。流れがあればさらに危険なため、原則として冠水路には進入しないのが安全です。
- 車が水没したら保険で直せる?
- 台風・洪水による水没は、一般型・エコノミー型どちらの車両保険でも補償対象となるのが一般的です。ただし、地震由来の津波による水没は対象外です。詳細は契約中の保険会社にご確認ください。
- 浸水した車は自分でエンジンをかけてもいい?
- かけてはいけません。感電や車両火災の危険があるため、販売店や整備工場に連絡してください。HV・EVは高電圧バッテリーを搭載しているため特に注意が必要です。
雨の日も安全で快適にドライブを楽しみましょう
梅雨や台風などの季節はもちろんのこと、近年の日本では短時間で大量に雨が降ることが増えてきました。車ユーザーの皆さんは、大事な愛車で雨の中を走る機会も多いと思います。今回紹介した用品や対策を参考にして、安全で安心なカーライフを楽しみましょう。
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